合理的な愚か者の好奇心

団塊おじさんの "見たぞ! 読んだぞ! 歩いたぞ!"

粉瘤(アテローム)の話

私には、持病(と言えば正確ではないのですが)、言ってみれば「体の癖」とも言うべき定期的に発症する病気がふたつあります。
ひとつは、尿管結石です。これは、ほぼ3~4年に一度のペースで、私の腎臓が、長径6mm短径3mm程度の楕円球状のシュウ酸カルシウムの結晶を産み落とすのです。その結晶が、キリキリと(私にはもちろんその音は聞こえませんが、その痛さのすごさからこの形容がピッタリなのであります)細い尿管の壁を削り取りながら、膀胱に落ちてくるのです。
ちなみに、男女の病気(正確には病気とは言えませんが)の痛みの中で、女が一番痛いのは「出産の痛み」、男が一番痛いのは「尿管結石」と言われております。

私が今回お話ししたいのは、実はもうひとつの私の体の癖である「粉瘤(アテローム)」の方であります。
粉瘤(アテロームとは、皮膚の下に袋状の構造物ができ、そのなかに“あか”のような物質がたまる腫瘍の総称です。身体のどこにでもできますが、顔、首、背中、胸にできやすい傾向があります。やや盛り上がった半球状の腫瘍で、しばしば中央に黒点状の開口部があり、強く圧迫すると、ときにドロドロしたネリ状の物質が出てくる症状を呈します。(川端皮膚科クリニック「皮膚科Q&A」
私には、この粉瘤がほぼ10年に一度のペースで体のどこかに出てくる癖があるのです。
10年前は、背中の上部・首の少し下でありましたが(これは無事に切除しました)、今回の粉瘤は、なんと首の真後ろで、切開手術をするにはかなり危険とされている場所でありました。(最近知ったのですが、北朝鮮の前の首領様の金日成には、首の後ろに度肝を抜くような大きさの粉瘤があって、福こぶと呼ばせていたそうであります)
しかし、いかに危険な場所でありましょうとも、熱を持ち、そのうえ内部で化膿している様子であります故、敗血症のリスクが頭をよぎり、ついに意を決して西新宿のとある皮膚科クリニックで切除手術を受ける結果となりました。
どうでも良いことですが、この時メスを入れて頂いたドクターは女医さんでして、「あぁ、これは切らなければダメですネ、どうしますか?連休があるからその前がいいですよね。じゃ、今日切りましょう!」と度胸良く即日の切開手術となったわけです。
「度胸良く」と申しましたのは、10年前に首の少し下を切開した際のドクターからは、「場所が首に掛かっていると、切るのに少しリスクがあります。」と言われていたからです。

なお、後で聞いた話ですが、皮膚科のドクターには、比較的女医さんが多く、女医さんは一般的に男性よりメスを入れるのに度胸があると言われております。
ということで、私が悩まされてきた粉瘤は一瞬にして切除されてしまったわけです。
(なお、私の死んだ父親も、さらに驚いたことに私の子供達もほぼ同じ位置に粉瘤らしきものがありますので、これは忌まわしき家系であるかも知れません)

さて、私が今回書きたいテーマは、むしろここからなのであります。
粉瘤は、かなり大きくメスを入れることになりますので、その後、1~2週間ほど傷口が安定するまで、毎日通院し、消毒・殺菌の上、ガーゼを取り替える必要があるのです。
そこで私は、困ってしまいました。なぜなら、件の西新宿のクリニックはGW中5月9日まで、休診なのです。クリニックの女医さんからは、「紹介状を書きますので、GW中は必ずお近くの救急病院で、ガーゼを取り替える処置をしてもらって下さい。」と冷たく宣告されてしまったのです。
これは私にとって何を意味するかと申しますと、「花のゴールデンウィーク期間中ではありますが、どこへも行かずに必ず近くの救急病院(私の場合都立墨東病院)に通いなさい!」と宣告されたことになります。
ということで、このGW前半の三連休は、ER墨東に朝一番で通い詰める羽目となってしまった私ですが、ここでこれまでの私のケガに対する常識を180度覆す教えを受ける僥倖に出会うことになったのですから、世の中何が幸運となるかわからないものであります。
すなわち、西新宿の女医さんからは「お酒は飲まないように!お風呂は入らないように!シャワー程度は結構ですが、傷口に水がかからないように注意して!」とのごくありふれた指導を受けました。
ところが、ER墨東のドクターからはまるで反対のご託宣を戴いたのです。
すなわち、「最近の米国の皮膚科学会の論文では、あなたのような手術跡については、むしろシャワー等流水で患部を洗い流し、その後の傷跡はなるべく空気と接触させた方が回復が早く、望ましいとされており、それが定説となっている」と断言したのです。

私は大喜びで絆創膏をとりはずし、流れる血をものともせず、一週間ぶりで頭を洗い、シャワーで血を洗い流し、後は大判のバンドエイドで抑える程度にしておきました。
さて、その後の回復ですが、どうやらかなり順調な様子であります。
この調子なら、GW後半はER墨東に通わなくて済みそうです。

PS.現在、都内の救急病院で休日に皮膚科の専門医がいる病院は、極めて限られている、というよりもほとんどないらしいのです(たとえば隅田川以東では墨東病院だけです)。そうした意味で、私のような患者はER墨東が近くにあるということで相当の幸運と言うことになります。
あくまで仮定の話ですが、私が都内西部に住んでいたとして、術後悪性の敗血症となったとした場合、相当危険な状況に立ち至るリスクもあり得たということになります。