合理的な愚か者の好奇心

団塊おじさんの "見たぞ! 読んだぞ! 歩いたぞ!"

伝説の「夜へ急ぐ人」

Photo 4年前に一回書きましたが、再び「ちあきなおみ」を取り上げます。
先日のNHKのBS2では、なんと2週連続で、合計5時間に及ぼうかという彼女の特集番組が組まれました。
どうやら、NHK BSの番組企画担当者は、私と同様にちあきなおみをなんとか復活させたいという強い希望を持っているようです。

とりわけ、久しぶりに聞いた彼女の夜へ急ぐ人は圧巻でした。
是非みなさんも動画でその迫力をこちらからご覧ください。
私は実はこの歌を歌うちあきなおみを、テレビで見たのは三度目になります。
前回は4年前のやはり同じNHKBSの「歌伝説/ちあきなおみの世界」、そして最初に見たのは昭和52年の紅白歌合戦でした。

32年前の紅白歌合戦は、まだまだ視聴率の高い時期でなんと[E:sign03]視聴率は堂々77%でした。
司会者は白組が山川静夫、紅組は佐良直美
ちあきなおみの出番は、トリから4っつ前の勝敗を決定づける重要な位置での歌唱でした。

32年前の私の印象は、あまりの壮絶と呼ぶべき迫力に声もないという状況でした。一言で言えば、今までに一度も聞いたことのない驚くべき歌い方でした。
とりわけ、最後のスキャットは、その後のいろいろな芸能評論でも一致して「鬼気迫る」という形容をしております。

しかし、今回はさすがの私も三回目でしたので、かなり冷静に見ることができました。
その結果、わかったことがあります。
ちあきは司会の佐良直美に紹介された直後から、ハンドマイクを手でくるくると弄びながら、意気揚々と拍子をとるかのごとく中央に向かいます。私が見たところ、既にこの時点で、ちあきは尋常ならざる精神状態を感じさせます。
すなわち、ちあきは最初から「やってやるぞ[E:sign03]」という、理由はわからないがなにか得体の知れない破壊衝動を持っていたとしか思えません。
早い話が、ちあきはこの時点で一種のテロリストになっていたのだと思います。

夜へ急ぐ人」の作詞・作曲は、フォーク界でも異色の風雲児・友川かずきでした。友川かずきと言えば、フォーク界でも異色過ぎて一種のテロリストではありましたが、作者の友川もびっくりのちあきのテロリストぶりであったろうと思います。
彼女の真実の意図は図りかねますが、歌の最後のいわゆるひとつの鬼気迫るスキャットが終わった時、紅白歌合戦の会場であるNHKホールは一瞬静まりかえります。
観客の反応を今推し量れば、「この歌はなんだったのだろう、歌だったのだろうか[E:sign02]」という率直な驚きだったろうと思います。
司会の山川静夫も例外ではなく、リアクションの術もなしという状況だったと思います。その証拠に不自然に長い間の後で、NHK屈指の名アナウンサーであった山川は、よりによって紅白では絶対に言ってはならない一言を発します。すなわち「気持ち悪い歌ですねぇ[E:sign02]」と言ってしまったのです。
NHKの紅白での司会者の失言には、あの生方アナの「美空・・・」発言を筆頭にして、思えば数々の歴史があります。この山川の発言は、そのうちのひとつとして特筆すべきものだと思われます。

この後、歌唱力合戦を想定したのでしょうか、白組は歌唱力抜群の布施明が「旅愁斑鳩にて」を歌いますが、ちあきの後では鎧袖一触、会場の注意を引きつけることすらできなかったと思います。

このテロ攻撃が影響したのでありましょうか、ちあきは翌年の紅白から落選します。
同じ時期に、南沙織も突然引退して紅白から姿を消して、紅白はすっかりさびしくなっていきます。